手作りごはんに興味はあるけれど、調べてみると色々と良くない情報が出てくるし、不安…
ここへ辿り着いた方の中には、そんな風に思われている方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、あなたが手作りごはんという犬の食事の選択肢を持てるよう、また実際に選択できるよう、いくつかよく言われている懸念点についてお話していきましょう。
取り上げるテーマは、「栄養バランス」、「下痢」、そして「歯垢」です。
果たして、これらは大切なワンちゃんの健康を脅かす恐ろしい要素なのでしょうか。
手作りごはんで犬の栄養バランスが悪くなる?
まず結論としては、手作りごはんであるということが理由で、栄養バランスが崩れ、結果犬の具合が悪くなるのではないか…といった心配をする必要はありません。
そもそも、必要な各栄養素の量というのは、個体によって異なります。
個体が持つ性質はもちろん、生活環境、その日その時の体調や運動量等、本当に様々な要因で、別個体間ではもちろん、同じ個体の中であっても日々変わっていくものです。
同じものを同じだけ食べても、痩せていく人もいれば太っていく人もいますよね。
ですから、どの個体にとっても完璧な栄養バランスの数値は存在しないということを、念頭に置くようにしましょう。
それでもなお、「総合栄養食ではない、全ての栄養素を米国飼料検査官協会(AAFCO)が定めた基準値通りに含んでいるわけではない手作りごはんなんかあげたら、栄養不足で犬が不健康になってしまうじゃないか!」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
人間のお話にはなりますが、こんな実験があります。
2004年に公開されたドキュメンタリー映画で、1カ月間、3食某ハンバーガーチェーンのハンバーガーだけを食べ続けるという実験が行われました。
結果、被験者には体重増加、落ち込み、コレステロール値の上昇などが起こり、1か月の期間を待たずにドクターストップがかかってしまいます。
「ほら!やっぱり、成分をきちんと調整された完璧な食事でないとダメなんだ!」と思った方、ちょっと待ってください。
似た実験で、某チェーン店の牛丼を食べ続けるという実験が過去に行われました。
ただし、今度は対象の牛丼は一日1食だけで、残りの食事は他のものを食べます。期間はハンバーガーよりもずっと長い3か月。
結果は、体脂肪率や血圧、中性脂肪、コレステロール、血糖値等に統計的に有意な変化は認められなかった、つまり悪影響があるとは言えなかった、というものになりました。
牛丼もマクドナルドと同じく、栄養成分を完璧に調整された食事ではありません。
違いは、他の食事を摂っていたか否か。
つまり、1週間、1か月、3か月…といった大きな単位で色々な食材やメニューから色々な栄養を摂れていれば、
ある1食が”完璧な”栄養バランスでないことが原因で、栄養バランスが崩れて不健康になってしまう、なんてことはありえないことが分かりますよね。
そして、総合栄養食のように”完璧な”栄養バランスでなくとも、手作りごはんには、(商品やブランドによりますがおおよそ)添加物不使用という利点もあります。
※ドッグフードの添加物について詳しく知りたい方は、こちらの記事を読んでみてください。
ですから、手作りごはんは栄養バランスが悪いから犬が不健康になってしまうかも…と過剰に心配する必要は無いのです。(もちろん、ハンバーガーの実験のように全く同じものだけを与え続けたら体調に影響することはあるでしょう)。
手作りごはんで犬は下痢になる?
結論としては、下痢になることはありますが、下痢は必ずしも悪いことではないということを知っていただく必要があります。
確かに、具合が悪かったり消化器の調子が悪いために起こる下痢もあります。
その場合は、犬自身も具合が悪そうな様子を見せるでしょう。
しかし一方で、食べ物の質が大きく変わって腸内環境がリセットされているとか、悪いものを排出している、というプラス方向の下痢もあるのです。
日頃カラカラのドライフードを食べているワンちゃんは、食事からはわずか10%程度しか水分を摂れていません。
水分の摂取量が少ないと、当然便は固まり、一見下痢をしていない良い状態が保てている!と思ってしまいがちです。
また、ドッグフードと手作りごはんでは、使用されている食材の質や製造方法などが大きく異なります。
※詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ですから、手作りごはんを取り入れることで、
より自然で良い食材から、水分をしっかり摂れるようになって老廃物等の排出がスムーズになったり、腸内環境が大きく変わったり…といった変化が起こり、それが下痢という症状として出ている場合があるのです。
一点気を付けなければいけないのは、「手作りごはんが原因ではない悪い下痢」が、丁度手作りごはんを取り入れた時期に重なって起こっているパターン等もあるということです。
つまり、良い下痢か悪い下痢かを飼い主様が見極める必要があるため、全くもって心配要りませんよとまでは言い切れません。
しかし、絶対に悪い!危ない!とまで考えてしまうのは間違っていると言えるでしょう。
手作りごはんは犬の歯に悪い?
このテーマの結論としては、歯に悪いとは言い切れませんし、それほど心配する必要もありません。
確かに、固いドライフードよりかは、柔らかい手作りごはんの方が歯にくっつきやすいかもしれません。
しかしここで勘違いしてはいけないのは、歯にくっつきやすい=歯に悪い、ではないということです。
歯垢が溜まって歯石になり、歯周病などの原因となるのは、そもそもが歯についたものをきちんと取り去っていないからで、食べ物の固さのせいではありません。
固いビスケットを食べ続けていれば歯を全く磨かなくても絶対に虫歯にならないかと言われると、そうでないことは誰でも分かりますよね。
大事なことは、歯に付きやすいものを与えないことではなく、どんなものを食べていてもワンちゃんの歯のケアをしてあげることです。
関連する話題を一つ挙げると、手作りごはんは柔らかいから顎が弱ってしまうという意見もあることでしょう。
しかし考えてみると、ごはんそのものを固くして歯を鍛えなければならないという決まりはありません。ごはんで鍛えられたら楽なだけです。
犬はごはん以外でも、固いものを噛みたくなった時に自分が手に入れられる場所に固いものがあれば、噛みます。
固いおもちゃを与えてあげたり、紐のおもちゃで引っ張りっこをしてあげる、固いおやつをあげる等でも対処可能な問題であり、手作りごはん=ドライフードより柔らかい=あごが弱る!と結びつけるのは少々強引な否定の仕方と言えるのではないでしょうか。
知れば安心、手作りごはんの”デメリット”
ここまでご説明した通り、巷で言われている手作りごはんのデメリットは、考え方や対処法さえ知れば、案外、心配するには値しないようなことが多かったりするものです。
もちろん、例えば歯垢の話でも、「私は忙しすぎてワンちゃんの歯のケアをしてあげる時間なんか一切ありません!他でケアを頼むお金も一切ありません!」という方にとっては、手作りごはんの柔らかさはデメリットでしかないかもしれません。
ですが、大抵の飼い主さんにとってはそれほど心配するには及ばないものであり、
こういったデメリットのように思わていることのために、手作りごはんの持つ様々なメリットを丸々捨ててしまうのは、とても勿体ないことではないかと思うのです。
※本記事は、皆様がワンちゃんの食について考えるきっかけとなることを目的として作成しており、
ドッグフード自体を否定するものではございません(ドッグフードにも良い商品やメリットはたくさんございます)。
また、本記事の記述内容は、必ずしも全てのドッグフードメーカー様や商品に当てはまるものではございません。